露出計



左 ミノルタ スポットメーターF、 右 ミノルタ フラッシュメーターW+ビューファインダー10°U

2008年8月17日更新

マミヤの稿にも書いた事ですが、むかし写真を撮るのには大変な手間がかかりました。
まず、
@写したいものにカメラを向け、構図を決めます。
Aピントを合わせます。
B露出を決めます。
C定めた露出に見合った、シャッター速度と絞りを算出します。
Dカメラのシャッター速度と絞りを調整します。
E感光材を準備します。
Fシャッターをチャージします。
Gシャッターを切り、撮影します。

およそ以上の様な手順を踏んでようやく撮影となりました。これではおよそ動きのある被写体は撮影出来ません。

現在のカメラの場合、@とG以外は全て自動化された感があります。
一時@の構図の決定もカメラにさせようと言う試みもありましたが、さすがに普及しませんでした。
カメラの歴史はひとえに自動化の歴史だったと言っても過言では無いと思います。
Eの感光材は、当初ガラス板に感光材を塗り付けたものでしたが、フィルムが発明され、カメラへのセット、持ち運びが容易になりました。現在、フィルムはいわゆる電子の感光材たるCCDやCMOSに取って替わられつつあります。
Bの露出の決定は、むかしは撮影者の感に頼ったものですが、セレンやCds、SPC(シリコンフォトセル)により電気的に測光出来る様になりました。
Cの露出計算、Dの露出制御は主として日本製カメラの独壇場だった感があります。初期のコンピュータ技術を駆使して、特に、レンズを通して見たままを撮影出来る一眼レフカメラとのコンビネーションに於いて、日本製カメラは他の追従を許さず、世界中にその販路をひろげて行きました。
Aのピント合わせは構図の決定と共に写真撮影の根幹とも言うべき操作なのですが、これも今では自動化され、カメラが勝手にピントを合わせてしまいます。
Fのシャッターをチャージする操作が必要なカメラなんて今どれだけ生産されているのやら。

カメラとは元々こうしたいくつもの煩わしい操作が必要な機械だったのです。
それが技術の進歩と共に煩わしい操作を必要としなくなり、結果として誰でも気軽に写真を手にする事が出来る様になりました。

ピント合わせは、写真を撮る上で重要なファクターですが、基本的に人間の目というものは、こうした操作は極端に目が悪くなければ大きな問題にはなりません。
従って、上記のカメラの自動化の歴史に於いても最も最後に自動化されたのがピント合わせだった事情がそれを物語っていると思います。
つまり、自動ピント合わせという技術が、人の目の性能を凌駕するまでには大変な時間と技術の進歩が必要だったからです。
これは人の目の性能が優れている為に、機械技術で容易にそれを超えるものが出来なかったからなのです。
確かに30年以上前から自動焦点カメラはありました。
しかしそれは、今からは想像もつかない程度の性能のものでした。
初期の自動焦点カメラは赤外線を当ててその反射時間を測定していた為、被写体とカメラの間にガラスがあるとピントが合わなくなったりしました。
その為、人の目と手を使ってピント合わせする方が遥かに素早く実用的でした。
ようやく、実用的な自動焦点カメラが発売されたのはコンピュータの進化と無縁ではありませんでした。

さて、写真撮影に於いて、機械技術の進歩の恩恵が最もおおきかったのは、露出の決定でしょう。
それは、人の目がピント合わせは得意としているのに対し、明るさの判断力は比較的鈍いからだと言えます。
以前「XDとR4」にも書きましたが、訓練を繰り返した人になると、明るさの判断も出来る様になりますが、さすがにそれは一般人には不可能です。
むかし、カメラマン木村伊兵衛氏が「俺の目は人間露出計だ。いつでも露出を言い当ててみせる。」と豪語したところ、それを聞きつけたある雑誌編集者が露出計片手に実際に木村伊兵衛氏と歩いて色々な場所の明るさを計ったところ、露出計の示す値と氏の言う値に寸分の狂いもなく驚いたと言う話を本で読みました。
さすがにそれはいわゆる名人芸で、一般的ではありませんでした。

元々モノクロフィルムの感度は広かった事から、厳密な露出合わせはそれほど必要なく、最初は昼間ならこの組み合わせ、朝夕はこの組み合わせと言った表だったり、計算尺を使っていましたが、次第にフィルムの性能が上がるに従って、正確な露出合わせが必要になってきました。
カラーフィルム、特にリバーサルフィルムはそれまでのモノクロフィルムに比べてはるかに露出にシビアなフィルムでした。
その為、露出の決定はそれまで以上に難しいものになりました。
カメラに露出計が内蔵される様になったのは単に技術の進歩だけではなく、露出決定の簡便さの要求という必然性があったのです。

ただ、カメラへの露出計の内蔵はカメラに電池を搭載する必要を生じました。
有名なライカもほとんどの型は露出計を内蔵していませんから電池不要な上に、古くとも修理可能なのです。
先に親戚からマミヤの二眼レフカメラを譲り受けた話を書きました。
古い二眼レフカメラも露出計は内蔵されていないものがほとんどで、ご多分に漏れずマミヤも露出計は内蔵されていません。

それまで僕の持っていたカメラは全て自動露出で、特に露出計の必要は無かったのですが、中央部重点式測光の欠点である逆光補正目的で手に入れていたスポットメーターが役に立ちました。
ただスポットメーターはあくまでカメラと同じ反射光式露出計なのでいつかは入射光式露出計を手に入れたいと考えていました。

そんなある日、大阪梅田の駅前第一ビルの中古カメラ店でミノルタのフラッシュメーターWがビューファインダー付で売りに出ていました。
多少擦り傷はあるものの十分使えそうです。
未だに直接入力で良い筈の入射光式露出計なのにいろいろ考え込んでしまっていまいち慣れませんが、マミヤともどもこれから大事に使っていくつもりです。

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